VRカメラ GoPro Fusion でドローンのような映像を撮ってみる

最終更新: 2019年5月5日

今回はドローンの紹介ではなく、「ドローンのような映像をVRカメラで撮る」という内容です。

「ドローンのような映像」ってなんだか抽象的な表現ですが、ここでは「手ブレがない滑らかさで、空間を(ある程度)自由に移動している映像」を想定しています。




ジンバルとスタビライザー

「手ぶれがない滑らかさ」に関しては、ドローンというより「3軸ジンバル」の恩恵なんですけどね。「3軸ジンバルを超小型化してドローンに搭載した」技術こそが、DJIが大躍進した真の立役者なのではないかと僕は考えております。


つまり、ドローンではなくても3軸ジンバルを備えたスタビライザーにミラーレスカメラやスマートフォンを載せれば、「ブレのない滑らかな映像」を撮ることはできます。実際にスタビライザーで撮影した滑らかな映像を見せると、「わぁ、ドローンみたい!」と驚かれることが多いので、いかに3軸ジンバルがドローンの普及に影響したのかが想像できます。


でも「ミラーレス+スタビライザー」のシステムって、その重量や機構の繊細さゆえに機動力があまりなくて、「空間を(ある程度)自由に移動」するのが難しいんですよね。例えばカメラを動かしながら思い通りの画角を維持することや、フォーカスを合わせることが難しい。他にも難しいことは色々とありますが、たとえスタビライザーでもできるだけカメラを「そろりそろり」と動かすのがセオリーです。ちなみに「(ある程度)」というのは、カメラの可動範囲が手で持てる範囲に制限されているためです。そこは絶対にドローンには適いません!



VRカメラの手ぶれ補正機能

3軸ジンバルは物理的にカメラのブレを吸収するシステムですが、一方ではブレた画像をソフトウェアで補正をするシステムも普及し始めています。GoPro Hero7などのアクションカメラや、Insta360 OneなどのVRカメラ、超小型ドローンで採用されているので、ご存じの方も多いでしょう。


ソフトウェアでブレを補正するとはいえ、カメラ自体が激しく動いているため、補正後の映像には不自然さが残ります。でもアクションカメラは超広角レンズなのでそこはあまり気にならないし、なにより機材を大幅に小型化できること大きなメリットなんですよね。

さらに360度の映像を記録するVRカメラは、「撮影後にアングルを検討して編集できる」という離れ業を実現してくれます


2017年に登場したInsta360 OneのPRムービーに度肝を抜かれた人も多いのではないでしょうか。


このカメラはソフトウェアによって「手ぶれと自撮り棒を消す」という斬新なアイディアで、ワンオペによる撮影や自撮り映像の新たな可能性を拓いたといえます。


僕もすぐに購入してこんな動画(『A Portrait of Yoshimitsu Nippashi(字幕あり)』)を制作しました。 オープニングのシークエンスでInsta360 Oneを使用しています。


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この動画では夜の新宿の雑踏で、被写体の頭上で宙返りするなど、ドローンでも撮れないアングルを実現できました。


でも、こうしたギミックってすぐに飽きてしまいますし、このカメラに関しては画質の低さが個人的に受け入れられず、それ以降はInsta360 Oneを持ち出すことはほとんどありませんでした。超小型の安価なカメラですからね。全方位を4Kで撮影した映像の一部をトリミングしているので仕方がないですし、気軽にVR動画を撮影するなら良いガジェットだと思いますよ。



なぜまたVRカメラを新調して撮りたくなったのか

VIEWNとしては「やっぱ人口集中地区でもドローンっぽい映像を撮りたいじゃないですか」と言いたいところですがそうではなく。


実は話題の映画『ROMA』(公式サイト)のカメラワークに圧倒されてしまい、「自分でもあんな映像を撮りたい!」と思ったからなんです。

『ROMA』は日常風景をモノクロで撮影しているにもかかわらず、一瞬たりとも観客の視線をスクリーンの外にそらせない緊張感がみなぎった素晴らしい映画ですが、その大きな立役者があのカメラワークではないでしょうか。

じっくりと動くパンとチルト、そして水平移動が、重要なストーリーテラーであり狂言回しの役目を果たしていると思います。アカデミー撮影賞も受賞していますしね。アルフォンソキュアロンさん、凄すぎますよ。


その「じっくりと動く」ところが、とても人間業とは思えないほど「じっくり」なんです。いかに超高級な映像用三脚でも、あんなに滑らかに動かせるものだろうか。メイキング映像を見ると電動のクレーンを使っているシーンもあったので、実際はほとんど人間業じゃないかも知れません。

たとえ電動でパンが出来たとしても、あんなに上手くフレーム内に被写体を収め続けることなんてとても難しいに違いない。そもそも僕のようにワンオペで動画を撮影する場合には、現場で考えることが多すぎて撮るだけで精一杯だったりしますから。


てなことをあれこれ考えた結果、「あのカメラワークをワンオペで実現するには、VRカメラで全体を撮っておいて、後から編集ソフトで切り出しながらチルトとパンをするしかないんじゃない?」という結論に達しました。僕の場合は。


あれ、そしたら本稿のタイトルは「VRカメラで『ROMA』のような映像を撮ってみる」にすべきじゃない?


そうなんですけども。


『ROMA』っぽいシーンを撮影するには、台本と演者が必要ですし。前述の通り「手ぶれのない滑らかさと、スタビライザーよりは空間を自由に動き回ったドローン風の(←ここ大事)」サンプルが撮れたので。


ということで、前置きが大変長くなってしまいましたが、ここからが本稿のメインです。


Insta360 Oneを下取りに出してGoPro Fusionを買いました。


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初めてFusionで撮ってみた

買ってすぐに撮影し、VR動画からカメラアングルを調整して編集したサンプル動画がこちらです。(サンプル動画は約1mの自撮り棒にFusionを載せて撮っています )

いかがでしょう。手持ちのカメラでは撮れない、ドローン風の映像のように見えませんか?

見えて欲しい!(笑)

00:26あたりから始まる参道のシーンのように、早回しをしながら滑らかに180度回転をするなんてことは、普通のカメラやドローンでは出来ない、ちょっと不思議な映像じゃないでしょうか。


上の動画をVR動画として編集し直したのがこちらです。




Insta360 Oneや、その上位機種のInsta360 One XではなくGoPro Fusionを買った理由

○画質

全天球(360度動画)を4Kに収めるInsta360 Oneに対して、Insta360 One Xは5.7K、Fusionは5.2Kとより高解像度で収録可能です。


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でもVR動画として鑑賞するなら、この違いはあんまり感じられないかも

他の人にVR動画を鑑賞してもらうためにはYoutubeにアップするのがメインの使い方だと思いますが、Youtubeだと5.7K動画をアップしても4Kに圧縮されてしまうんですよね。ビットレートもサーバ側でかなり低くエンコードされますし。


今回のテーマのように、360度動画の一部をFHD動画に切り出すなら解像度は少しでも大きい方がいい。解像度だけだとFusionよりInsta360 One Xの方が有利ですが、各国のYoutuberがアップしている比較動画を観ると、画質はFusionの方が良好に感じました。特に色の出し方は自然に感じましたね。

One Xはlogによる収録も対応していますが、個人的に8bitのlogは使い物にならないと考えているので特に興味もなく。


360度動画の合計のビットレートは共に120Mbpsですが、FusionはMicroSDカード2枚に分けて保存されるので、Fusionの方に安心感を感じます。


ということでFusionを選択しましたが、カメラから書き出された直後の動画を観た感想は「Insta360 Oneよりは少し綺麗になったかな」というぐらいなものですね。自然光が入らない室内では、かなりノイズも目立ちますし、過度の期待は禁物です。

やはりセンサーサイズとカメラの少なさの壁は大きいです(業務用のVRカメラは6つ以上カメラが付いていたりします)。


○メーカー専用の編集ソフト

Insta360 もFusionも、本体に付いている2台のカメラで保存した動画素材をVR用の動画(正距円筒図法がメインです)に変換する「スティッチング(縫い合わせ)」という作業のために、メーカーが用意している専用の編集ソフト(以下:専用ソフトと呼びます)が必要となります。


Insta360にはInsta360 Studio、FusionにはFusion Studioという専用ソフトで、どちらも360度動画から一部をFHDに切り出して通常の動画にする(以下:「切り出し」と呼びます機能が搭載されています(Insta360ではFree Capture、FusionではOver Captureと呼ばれています)。

今回またVRカメラを使い始めたのは、この作業をするためです


僕は編集にPremiere Proを使用しているのですが、Premiere Proの標準機能では切り出しができないんですよね。(そのうち搭載されそうな気がしますが)

なので、冒頭で紹介した『A Portrait of Yoshimitsu Nippashi』のオープニング部分はInsta360 Studioで編集して書き出しました。以下のようなフローです。


・[VRカメラ(撮影)] -->[専用ソフト(スティッチング+切り出し+エンコーディング)]--->[Premiere Pro(動画編集)]


でもこの専用ソフトの機能が物足りなくて、どうしても思い通りに動かせなかったんです。


実はFusion Studioの同機能もInsta360 Studioと同じくらいに貧弱なんですが、GoProからはなんとPremiere Proで360度動画からFHDへの切り出しを行うためのプラグインがリリースされているんですよ! つまり以下のようになります。


・[VRカメラ(撮影)] -->[専用ソフト(スティッチング+エンコーディング)]--->[Premiere Pro&GoProプラグイン(切り出し+動画編集)]


カメラアングルを変更する際には、動き始めと止まる瞬間を滑らかにするために、キーフレームを打ってベジェ曲線を操作して・・・という細やかな調整が必要なんです。そうしないと、カメラの動きがカクカクしてしまい、『ROMA』のようなカメラワークにはならない!というワケでして。 こうした切り出しの際の微調整はPremiere Proのような動画編集ソフトでなければできません。


今回の動画でもこのように細かくアングルの動きを微調整しています。


さらにFusion Studioはデータ書き出し(エンコーディング)にGoPro Cineform 422 HighとApple ProRes422という高画質なフォーマットを選べることも、Fusionを選んだ大きな理由です。

Insta360 Studioはこのエンコーディング時に、かなり画質が劣化してしまうんですよね。

(最新のInsta360 Studio for One Xの書き出しフォーマットは検索しても調べられなかった)


ということで、僕がFusionを選んだ最大の理由は、この専用ソフトプラグインの存在です。

※Premiere Pro CC 2019用のプラグインは、標準のパッケージとは別にダウンロードする必要あり(2019年5月上旬現在)


このプラグインは無償で配布されており、Insta360 Oneでも自由に使用してPremiere Proで編集が可能です・・・!


○防水

Fusionは専用のハウジングがなくても5mの防水機能があります。

先日水中ドローンを入手して、そのために小型船舶免許を取得中の僕としては、この機能も重要でした。

今回のサンプル動画の冒頭でもその恩恵に預かって、いきなり船から海面スレスレにまでカメラを突き出しています。もちろん波を盛大にかぶっております。

動画の後半で猫を追いかけるところでも、突然降り出した雨のせいでレンズに水滴が付いていますね。


以上が、僕がGoPro Fusionをチョイスした理由です。



VR動画の編集とマシンスペック

5K以上の動画を専用ソフトでスティッチングしてエンコードするためには、PCにかなり大きな負荷が掛かりますが、Fusionの場合は特に高性能なスペックが要求されるようです。

某Youtuberが専用ソフトで「10分の動画の処理(スティッチング+エンコーディング)をするのにMacBook Airで一昼夜掛かった」と語っておられましたが、他のレポートを読んでもグラボを積んでいないノートではかなり厳しそうです。 この時点ではまだ動画編集に入る前の下処理段階ですから。


僕の動画編集用PCは以下のスペックですが、それでも専用ソフトでのエンコードに元動画の5.5倍の時間が掛かりました。

・CPU: Core i7-8700k   (定格3.7Ghzを4.4〜4.8Ghzで運用)

・グラボ:GTX1060 6GB

・メモリ:32GB

・ストレージ: 全てSSD

・OS: Windows10 64bit


サンプル動画内で江ノ島の参道の人混みを歩いているシーンがありますが、その元になる動画素材(クリップ)が約9分あったので、そのクリップの処理だけで約50分も掛かっています。

それ以外にも使いそうなクリップをいくつか選んでまとめてエンコードをしたところ、合計で約3時間も掛かってしまいました。


上記は全てFusion Studioの話ですが、その後のPremiere Proでの編集もかなりの負荷がかかっていました。なにせ元の素材が5Kですからね。。

11Kで収録可能なInsta360 TITANでは一体どれだけのスペックと時間が必要になるのだろう・・・。


VR動画はかなり高スペックなPCで編集をすることが前提となります


ちなみにWindows版のFusion Studioでは、長尺クリップのエンコードの際に「360 AUDIO」を選択するとハングアップしてしまうバグがあるようで、はじめは随分とこれに悩まされました。

(2019年5月上旬現在)


編集後の感想

結論から言うと

  1. 画質の向上は課題としてあるものの

  2. 撮影に関するあらゆることが簡単で

  3. (特にワンオペでの)新たな映像表現や

  4. 旅の記録で新たな発見

の可能性を感じる面白い機材だと思います。

特に2.の気軽さは重要です。カメラはとにかく「撮ってなんぼ」ですから!


それ以外に気づいた点を挙げます。


・手ブレ補正が優秀

歩く際の縦軸(Z軸)の揺れはさすがに吸収しきれない部分がありますが、それは3軸ジンバルスタビライザーも同じ。スタビライザーの調整の面倒くささを考えると、こんなに小さくて軽い機材で撮れるアドバンテージは計り知れません。


これだけでも「ドローンっぽい映像」となりますが、3m近い自撮り棒を用意して地面スレスレからビューンと高く持ち上げたりすると、「さらに浮遊感がプラスされたドローンっぽい映像」が撮れるのではないでしょうか。


・撮影時にアングルを気にしなくていい

「どんなシーンを撮るか」だけを事前にイメージしておいて、あとは自撮り棒をなんとなくそのシーンに合わせて気軽に動かすだけ。 「撮影後に被写体がちょっと画角からはみ出してた」なんて心配はナシ。これはホントに楽ちんですよ。


編集時に「どのアングルを切り取るか?」をアレコレと考えるのも楽しいです。


・意外なものが写ってる

38秒あたりに写っている天井画は、編集をしていて気付いたものです。



こういうのって、旅の記録として撮っておいた時に、後になってから価値が出てくるんじゃないでしょうか。


その代わりに360度VR動画として公開する際には、意外なところに写ってはいけないものが入っている可能性もあるので気をつけましょう。今回は人にブラーを掛けてボカすのに、最も手間が掛かりました(笑)


ちなみにVR動画の一部に写っているこの線は、人をぼかす際に入れたブラーエフェクトの境界線を画面の枠外に設定したことによって出てしまったものです。Fusion Studioのスティッチングのミスではありません。



・動物に近付ける

意外な利点がこれ。鳩が飛び立つ瞬間に、群れの中から撮れるかも?

でも動物たちには優しくね。



・ただし編集は重い

「使わないところもとりあえず全部撮っておく」というVR動画ですから、前述の通りとにかく編集にマシンパワーが必要です。でも過去を振り返ると、FHDや4Kの登場時にも同じ悩みをみんなが抱えていましたよね。これは映像の世界では「新しいこと」や「面白いこと」をするための通過儀礼のようなものかもしれません。

編集マシンのスペックは年月とともに必ず向上するので、「とりあえずカメラの最高性能で撮っておく」というのも、映像や写真の世界では当たり前のことです(あくまで個人の感想です)。


旅の記録として撮っておくのであれば、スティッチング〜エンコード作業は「寝る前にキュー出ししておけば翌日には出来上がっている」ぐらいのゆとりを持った取り組み方で良いのではないでしょうか。

今では重すぎるVR動画の編集も、10年後のノートPCで簡単にできるでしょうから、その時が来るまでそっと動画素材を寝かしておきましょう。


冗談はさておき。



今のところの結論

VRカメラで「ドローンっぽい映像」を撮ることは簡単にできました。

自撮り棒を振り回しているだけで、ブレがなくて浮遊感のある映像が撮れますから。

でも、撮るのは簡単でも、編集は大変!

でもでも、ドローンを街中で人の近くで飛ばすのはもっと大変!!

っていうか無理です。

なので、ドローンの映像に興味がある人は、VRカメラで撮影したシーンを作品の中に織り交ぜておくのも良いのではないでしょうか。


僕の場合は、個人旅行ではスタビライザーのセッティングの面倒くささから「地上での動画」を撮っておくことはあまりなかったんですが(ドローンの空撮や地上の写真は本気で撮ってますけれど)、これからはFusionを片手に歩きながら「とりあえず撮っておく」のもアリだなと考えています。


仕事で制作する動画でも、Youtube用の動画なら使えそうな気がします。

それ以上の画質が必要になったら、200万円投資してTitanを買わないといけないかも!



おまけ

ちなみに、手ブレがない動画を簡単に撮りたいのであれば、OSMO Pocketもかなりいけますよ。

本体は小さいけれど、画質はFusionから切り出したものより格段に綺麗です。


Osomo Pocketのamazonの商品ページを見る


以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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