<前編>『南小国ドローン手形』と熊本の友人たち

最終更新: 2019年3月27日

南小国ドローン手形



 熊本県の阿蘇からさらに大分県よりにある小さな町、南小国町で実施されている『南小国ドローン手形』というユニークな試みをメディアの記事を読んで知った。使用料を支払えば町内に点在する絶景スポット5ヶ所で一日中ドローンを飛ばせるという企画で、主催しているのは南小国町観光協会だ。

 僕は以前から撮影を目的とした旅にふらっと一人で行くのが趣味で、数年前にもカメラ片手に阿蘇山周辺の絶景ロードを巡ったことがあり、押戸岩の丘の異世界のような景色に大いに感銘を受けたことがあった。

 『南小国ドローン手形』ではその押戸岩の丘でもドローンを飛ばせるときいて、「絶対に行くしかない!」と心に決めてから旅程を立てはじめた。そもそもドローンの飛行が許可されている場所が少ないことに加え、僕はドローンの操縦より撮影が旅の目的なので、できれば初めて訪れるフィールドを巡り続けたいと考えている。ちょうどMavic2 Proを手に入れたばかりで、カメラバッグに高画質なドローンを背負って旅ができるとわくわくしていた矢先のことだ。しかも友人達がたくさんいる熊本だ。行かない理由を見つける方が難しい。




熊本との縁、そして魅力


 2011年に熊本市で行われた小さなアートイベントに、審査員として招かれたことがきっかけで、熊本市内のアーティスト達と知り合った。それ以来、何度か熊本に訪れてアーティスト達と親交を深めてきた。個人的な話をすると、祖母が熊本の出身だったことにも少なからず縁を感じている。

 熊本は火の国とも呼ばれるが、実は水の国でもある。阿蘇でたっぷりと蓄えられた水が、豊富な地下水となって海まで注いでいるため、人口50万人以上の都市では日本で唯一地下水のみを水道の水源としているのが熊本市だ。ただ水が豊富なだけではなく、水道水が美味しいことでも有名で、その美味しさは「蛇口をひねればミネラルウォーター」と言われるほど。サントリー九州熊本工場の工場見学では、「今まで飲んでいたものはなんだったんだ?」と叫びたくなるような"つくりたて”の『プレミアムモルツ』も楽しめる。

 “火の国”と“水の国”となれば当然温泉も豊富で、黒川温泉のほかにいたる所に温泉郷があるのも熊本の大きな魅力だ。

「美味しさ」と「温泉」はもっともポピュラーな旅の醍醐味のだが、今回の「ドローンの旅」ではそのどちらも優先順位を落として、「アーティスト達と触れ合う旅」をテーマにスケジュールを組んだ。



旅程


今回の旅は現地に3日間の滞在予定だ。


・初日

 ズベさんこと造形作家の藤本髙廣さんに取材を兼ねてアトリエにお邪魔して僕が運営しているYoutubeチャンネル『CAT’S FOREHEAD』のトークを収録。

※その動画を最後にアップしておきました


・2日目

『南小国ドローン手形』撮影予定日


・3日目

撮影予備日。夕方には帰京のフライトを予定。


 初日の夜の段階での天気予報が、2日目は曇りで降水確率が40%で、風も5m/sとフライトギリギリ。3日目が晴天で降水確率が0%でほぼ無風。

 通常であれば3日目にフライトをすることになるのかもしれないが、空は曇っているぐらいのほうが「表情がある」と感じてしまうタチなのと、3日目に雨が降ってしまったら取り返しがつかないことになるので、2日目に南小国へ向かうことにした。2日目の途中で軽く霰が降ったりもしたが、なんとか無事に全てのポイントを回ることができた。

 そのお蔭で3日目は昭和の珍品を取り揃えた魔窟のようなショップ『モラトリアム』とオーナーの中村さんにも逢うことができ、とても充実した熊本の旅となった。 彼女とのトークコンテンツも現在鋭意編集中。公開次第にここにもアップします。



フライトの仲間


 熊本を拠点に動物をモチーフにした作品を制作しているアドちゃん。彼女のクルマ「アド号」の5速MTを操って熊本市内から阿蘇の山頂までを駆け巡り、ドローンを飛ばすためのフライトアシスタントを努めてくれた。大学では畜産を学んでいたという、風変わりな経歴を持つ女性アーティストだ。

アドさんのWEBサイト: http://jogoo-ado.com/





旅の機材リスト


・ドローン:Mavic2 Pro

 「旅の装備は軽いほど良い」と考えている僕にとっては、この機種の登場によってようやく旅先で本格的な撮影ができるようになった。もちろん仕事で空撮をする場合は、何らかの方法でPhantom4Proを運んでいたのだが、飛行機を利用した個人的な「旅」ではPhantomを持ち運ぶことはとてもじゃないけど考えられなかった。


・ミラーレスカメラ(SONY α7R2) + 50mmの単焦点レンズ

 フルサイズのミラーレスにレンジファインダー用のMFレンズ。これ以上軽くて高画質な組み合わせは考えられない。カメラを一つだけしか持って行かない場合は、35mmを選択することもある。


・コンパクトデジカメ(RICOH GR:28mm単焦点)

僕は「ズームレンズ」と「レンズ交換」が好きではないのだが、旅先ではどうしても広角で撮りたいシーンもある。となると、小さくて高画質なこのカメラをポケットに忍ばせておいて、サッと取り出して写真を撮ることになる。


 いつもの旅ならこの機材だけだ。


 しかし今回の旅では3月末に発売予定の拙著『ドローンハンドブック』への取材も兼ねていたため、16-35mmのズームレンズと、85mmの単焦点レンズもチョイスした。



 上記の機材とバッテリー類が、全て機内持ち込み可能なカメラバッグに収まった。バッテリー類をリュック上部の荷室に入れてもまだ余裕がある。テクノロジーの進化と各メーカーのたゆまぬ努力に心から感謝!の瞬間。



『南小国ドローン手形』へGO!

 熊本市内のホテルを朝の8:30に出発し、ほとんど渋滞にはまることなく快適なドライブで南小国に向かったが、到着したのはすでに11時頃だった。

 『南小国町観光協会』に併設されたオフィスでドローン手形を受け取る。“手形”といっても腰の高さほどもある“立て看板”のようなものだ。これはフライトをしている最中にでも「ドローン手形を利用してオフィシャルにドローンを飛ばしています」ことをアピールするためのもの。ドローンのプロパイロットが実際に業務でフライトをする場合にも、こんな形状の立て看板を設置することがあるため、『南小国ドローン手形』は「ドローンのことをよく知っている人が企画しているのだな」ということが想像できる。



 利用料を支払って“手形”を受け取る際に、ご担当の方から『南小国ドローン手形』の利用方法について軽くレクチャーをしていただく。

 まずは雄大な景色が広がる『押戸岩の丘』で、たっぷりと空撮を楽しむのがオススメとのこと。その後に『親水公園』周辺でフライトを終えてから、黒川温泉郷を楽しむ利用者も多いそうだ。

 確かに『押戸岩の丘』を最後のロケーションにしておきながら、時間切れで退散となってはもったいないし、最後に温泉で締めるというアイディアにも大賛成だ。「お昼ご飯や移動中に、ここ(南小国町観光協会)でバッテリーを充電しますよ」とも言ってくださった。

※本原稿の執筆中に、ドローンのバッテリーが充電できるモバイルバッテリーの貸し出しも始まった。



南小国ドローン手形の概要


公式サイト: https://dronetegata.com/


1.親水公園

2.平野台高原展望所

3.三愛レストハウスグラウンド

4.旧星和小学校グラウンド

5.押戸石の丘



まずは『押戸岩の丘』から


 緩やかにうねった地表がどこまでも続く不思議な光景に「これぞ阿蘇!」と小躍りしたくなるような素晴らしいロケーション。僕はドライブと撮影を楽しむ旅として過去にも訪れたことがあったが、「まさかここでドローンを飛ばせるようになるとは。なんて素晴らしい企画なんだろう!」と、南小国ドローン手形の発案者に喝采を送りたい。

 ちなみにこの周辺にある『ミルクロード』と『マゼノミステリーロード』(どちらも風変わりな名前だけど)は、長野の『ビーナスライン』や群馬の『志賀草津高原ルート』にも負けない、日本が誇る絶景のドライブコースだ。『南小国ドローン手形』を織り交ぜつつ、「どこをどのように巡るのか」と旅程を考えるのが楽しい。

 『押戸岩の丘』は丘の頂にシュメール文字が刻まれた(と言われている)巨石が並ぶパワースポットとしても知られており、これらの岩が磁力を帯びているせいでコンパスが狂うことが体験できる。そのせいか、これらの岩の近くではドローンの電波が不安定になるとドローン手形のガイドに記されているので、フライト時にはアプリのアラートにも注意したい。





 『南小国ドローン手形』の5カ所の中でも、一般の来場者(つまりドローンフライトの第三者)が断トツに多い場所なので、フライト時には周囲の確認も怠らずに。しかしこの日はラッキーなことに貸し切り状態だったので、アドちゃんもドローンのフライトにチャレンジ。バッテリー2本分のフライトをたっぷりと楽しんで、次のスポットへ向かう。

※駐車料金200円が別途必要



『吾亦紅』であか牛の蕎麦

 フォトジェニックな景色が広がる『押戸岩の丘』でバッテリー2本分フライトをしたら13時を回っていた。17時に「手形」を観光協会へ返却することを考えると、残りのスポットも急いで回らねばならない。だが、腹が減ってはフライトができぬ。

 観光協会に立ち寄ってバッテリーを充電してもらいつつ、近くの「そば街道」にある店に駆け込んだ。オーダーしたのは阿蘇の特産品である『あか牛』を使用した『あか牛南蛮そば』。あくまで個人的な感想だが、熊本に負けず劣らず水がおいしい北海道では(羊蹄山の湧き水は本当にうまい!)、みんなが食べたい魚介類よりも「土」が育てた野菜や肉が圧倒的に旨いと思う。まさに「大地からのとびっきりの贈り物」だ。同じ理由ではないかと想像するが、このあか牛も実に滋味溢れる味がした。

 蕎麦もあか牛も大変美味しかったのだが、慌てて胃に掻き込んで次のフライトエリアへ急ぐ。




>>>後編へ続く

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